【90年代PCゲーム男】一時は3台のPCを駆使して遊ぶほどハマったMMORPGの金字塔『エバークエスト』




「俺たちと一緒にドラゴンを倒しにいかないか?」――そんな心躍るような体験をみすみす見逃す手はあるだろうか。

『エバークエスト』(以下、EQ)は、1999年3月に当時ソニーの子会社だったSony Online Entertainment(SOE)から発売された、MMORPGだ。すでに『ウルティマオンライン』がある程度成功を収めた後の後発組だったが、3Dで描かれた世界を冒険する動画を見て、すっかりとりことなってしまった。

ここから少しだけ時計の針を巻き戻してみよう。同年の初頭、それまで約2年間1日も休まずに遊び続けてきたブリザード・エンターテイメントのRTS『スタークラフト』だったが、拡張パックの『Brood War』が出てすぐあたりから、急激に熱が冷めてしまった。そんなときに、次に遊ぶべきゲームはないかと探していたところ、まさにジャストなタイミングでリリースされたのが『EQ』だったのである。

当時は秋葉原の一部のショップや、PC和歌山というオンラインでも購入可能な輸入PCゲームを扱っているお店があり、早速そちらで注文。『スタークラフト』時代にクランを一緒に組んだ数名の仲間たちと共に、ほぼオンタイムでゲームを始めることができた。

▲当時のパッケージに描かれていたイラスト。そういえば輸入盤のPCゲームをパッケージで買う機会もすっかり減ってしまった。

斬新だったFactionにヘイトシステム、リンクからトレインへ

今でこそ当たり前になってものもあるが、『EQ』では、当時かなり斬新だったシステムがいくつも盛り込まれていた。そのうちのひとつがFactionシステムだ。本作では友好度を表すFactionという要素が盛り込まれていた。

こちらは最も友好度の高い「ally」から、見かけたときに攻撃をしてくる「ready to attack」の9段階でランク付けされており、それがクエストをこなすときなどに影響してくる。プレイヤーがレベル上げなどをするときに倒すモンスターなどは、当然のことながら「ready to attack」である場合がほとんどだ。それ以外にも、エヴィル属性も持つキャラクターを選んでプレイを始めると、通常の街ではガードから攻撃を受けてしまう。これらはクエストなどをこなしていくことで、Factionを変化させていくことが可能だ。

▲フリーポートのような大きな街では、エヴィルキャラのガードとの追いかけっこもちょくちょく目にすることがあった。

パーティでプレイ中、モンスターが誰をターゲットに攻撃するか決定される、ヘイトリストという目に見えないパラメーターも用意されていた。基本的にはよりダメージを与えたり、あるいは座って体力やマナを回復しようとしているプレイヤーがリストの上位に並んでいく。攻撃は体力のあるタンクが受けるというのが基本ではあるが、キャスターがむやみに魔法を撃ち込みまくってヘイトを稼いでしまい、攻撃されて死んでしまうということもあるのだ。

そのため、各プレイヤーは自分の役割と適切なタイミングで攻撃などを加えていくという戦術が重要となってくるのである。

もうひとつユニークな要素がリンクシステムである。敵対しているモンスターは、それぞれ反応する範囲のようなものを持っている。その範囲にプレイヤーが入ったときには、こちらに向かって攻撃を仕掛けてくる。やっかいなのは、複数のモンスターが隣接している場合だ。そのときは、いずれかのモンスターが攻撃を受けるとほかのモンスターも反応を示し、対象となるプレイヤー目がけて襲いかかってくる。

これがダンジョンの深部などで起きたとき、処理しきれずに逃げ出すプレイヤーを目がけて、次から次へと別のモンスターがリンクしてしまい、巨大なトレインとなることがあった。たまたまその通り道にいたプレイヤーは、そのトレインに巻き込まれて袋だたきにあい死んでしまうなんてこも、Lower GukやSolB(Nagafen’s Lair)などの人気スポットでは日常茶飯事であった。

MOBAや『オーバーウォッチ』などの礎にもなった職業とパーティーシステム

『EQ』に限った話しではないが、MMORPGは単にオンラインで様々な人たちと冒険をするというだけではなく、RPG=ロール・プレイング・ゲーム(職業になりきりそのプレイを楽しむ)という部分も重視されている。

各プレイヤーはタンクやキャスター、ヒーラー、サポートといった職業を選んでゲームを始めることになる。ちなみに、このタンクやヒーラーといったものは『EQ』における職業の名前ではない。たとえばタンクとは、その名の通り戦車のように後衛に控えているメンバーの代わりにダメージを受ける、縦のような役割を指す職業だ。

単に盾代わりになるだけではなく、キャスターやヒーラーなどか弱いメンバーに敵の攻撃が行かないように敵のヘイトを稼いでコントロールする役割も果たす必要がある。『EQ』ではウォーリアーやパラディン、シャドウナイトなどがそれらに該当するが、レイドでは実質的にはウォーリアーがメインタンクとなっていた。

レンジャーやローグなどサブタンクと呼ばれる職業もあり、こちらはメインタンクほどの体力は無いため壁代わりにならないが、その代わりDPSを稼ぐ役割を果たす。

キャスターは、魔法で敵にダメージを与える職業で、『EQ』ではウィザードやマジシャンなどがそれにあたる。キャスターはマナ(MPのようなもの)の管理をしつつ、適切なタイミングで魔法を打ち込み敵の体力を削っていく必要がある。むやみに魔法を連打するとひとりでヘイトを稼いでしまい、敵に集中攻撃されて死んでしまうこともある。たんにマナ回復のために座っているだけでもヘイトを稼いでしまう。キャスターではじめたプレイヤーは、初心者のときにこうしたミスを重ねてきており、上級者ほどヘイト管理が上手くなっていった。

クレリックなどのヒーラーは、主にメインタンクの傷を癒やす役割を果たす。死んだ仲間も復活できるほか、CH(コンプリート・ヒーリング)と呼ばれる魔法を使うことができる。レイドでは、それこそ装備でモンスター並みのHPを持つタンクでも、一瞬で体力が減っていくため、このCHを複数のクレリックが数珠つなぎで唱えていく「CCH(チェイン・コンプリート・ヒーリング)」というテクニックも生まれたほどだ。

ほかにもサポート的な役割を果たす職業も用意されており、これらをバランス良く配置してパーティを組むことで、キャンプなどの効率も上げることができるようになっていた。

システムを超えたアイデアで神やドラゴンに戦いを挑むレイド

『EQ』といえば、大勢のプレイヤーたちと協力しながら神やドラゴンに挑む「レイド」がある。元々6人パーティで戦うゲームデザインになっており、システム的にはこうしたものには対応していなかったのだが、ゲームで用意されていなければ知恵を働かせてなんとかクリアしていくというのが当時のゲーマー気質だった気がする。

この6人ひと組のパーティをいくつかの班に分けて、ギルドチャットなど共通のチャンネルを駆使して戦いに挑んでいった。

▲レイドのための仕組みはゲーム的には用意されて折らず、6人までしかパーティを組むことができなかった。

『EQ』といえば、大勢のプレイヤーたちと協力しながら神やドラゴンに挑む「レイド」がある。元々6人パーティで戦うゲームデザインになっており、システム的にはこうしたものには対応していなかったのだが、ゲームで用意されていなければ知恵を働かせてなんとかクリアしていくというのが当時のゲーマー気質だった気がする。

この6人ひと組のパーティをいくつかの班に分けて、ギルドチャットなど共通のチャンネルを駆使して戦いに挑んでいった。

まぁ、こうしたシステマチックにプレイしていたのは日本人だけで、たまに外国人のレイドに参加すると、かなりアバウトな感じだった。まだ拡張パックが発売されておらず、レベルの上限も50までだった頃、当時のハイレベルプレイヤーの遊び場のひとつであったLGukこと「Lower Guk」で、野良で外人パーティに参加して遊んでいたときに、「これからドラゴンを倒しにいくからお前も来ないか」という誘いがあった。

「ドラゴンを倒しにいく」という、なんとも甘美な響き・・・・・・。下手するとアイテム回収不可能でロストしすてしまうリスクもあったものの、このチャレンジングなイベントに参加しないわけにはいかず、すかさず「Yes」と答え挑んだ。

その相手の名は「Lady Vox」。氷の女王ともいえるような、永久凍土に住んでおり、まわりを屈強な巨人に守られている。そもそも「Lady Vox」にたどり着くまでも大変だったのだが、攻撃がかなり強力で多くの死体の山が気付かれていった。

女王の吐くドラゴンロアやフォロストブレスなどで、広範囲のダメージと共に自分の意志と関係なくあらぬ方向に走り出してしまうプレイヤーキャラたち。そうした戦いが長時間続いたあと、なんとか倒すことができた。この達成感が素晴らしく、あらためて『EQ』というゲームの魅力にハマったのである。

レアポップのレアドロップ狙いの不毛なキャンプ

『エバークエスト』とタイトルにもあるように、本作には無数のクエストが用意されており、なかにはエピックアイテムといったその職業向けの大規模なクエストも展開されていた。しかし、そうしたクエストの多くには、たまにしか現れないレアポップのキャラクターが持つ、さらにたまにしかドロップしないレアアイテムが含まれていることもあり、プレイヤーは何時間どころか何週間も同じ場所で雑魚モンスターを刈り続けることを強いられる場合が多かった。

ちなみになぜ雑魚狩りをする必要があるのかというと、そのあたりに出現するモンスターテーブルの中に目的のレアキャラが含まれているからだ。雑魚がフィールド上にいる間は出現しないため、刈り続けるというわけである。サーバリセットなどが掛かったときは比較的レアキャラが出現しやすく、それを狙ったキャンパーも多く見かけた。

筆者もそうしたキャンプをしたが、特に思い出深かったのはクエストとは何にも関係ない、装備させると手元が赤くピカピカ光るというだけのアイテム『Glowing Black Stone』をゲットするために、ギルドメンバーに馬鹿にされ続けながらも、1週間ほど粘り続けてキャンプをしたことがあった。ゲームとしてはかなり不毛な感じだったが、苦労の末なんとか入手することができた。

しかし、こうしたキャンパーが自分しかいない場合は問題ないが、ときにはほかのプレイヤーとの取り合いになり、もめることもあった。本作のキャンプ問題はあらゆる場面でちょくちょく見かける、ゲームの欠点であったかもしれない。

▲ようやく出現したレアキャラを倒しても、たいていはハズレアイテムのドロップしかでなかった。

拡張パックで広がる世界観とインフレ化のジレンマ

発売から1年が過ぎ、ややマンネリ間が出てきた『EQ』の世界に新たな扉が開いた。2000年4月24日に初の拡張パックである『The Ruins of Kunark』(通称RoK)が発売されたのだ。新たな大陸に新たなモンスター。そして新たなアイテムの出現と、プレイヤーのわくわく感を煽るものだったが、その後続々と拡張パックが発売されていくにつれて敵やレベル上限の解放、強力な装備などの影響もあり、どんどん『ドラゴンボール』の世界のようにインフレ化していくきっかけともなった。

これは『EQ』に限った話しではなく、最近では『パズドラ』のようなスマホゲームでもユーザーが飽きないように新要素を追加していくことで、徐々にインフレ化していくというジレンマにとらわれてしまう傾向にある。

仕事の関係もあり、筆者がメインに遊んでいたのは3つ目の拡張パックである『The Scars of Velious』 (SoV)あたりまでだった記憶があるが、その後19もの拡張パックがリリースされている。

最終章~物欲とチャット化へ

多くの冒険を共にした仲間たちとは、当たり前のように仲良くなり、いつしか欠かせない存在となっていた。それにつれて、後半はゲームそのものを遊ぶことよりも、オンラインに接続してチャットツールとなっていた記憶がある。

また、この手のMMORPGは飽くなき物欲を満たすためにプレイしているような感じだ。より強くてカッコイイ武器や装備が欲しくて、レイドに参加している。1アカウントあたり、だいたい1500円ほど月額料金が必要だったが、最大3アカウントほど所有して、ひとりで3台のPCを操りながらレベル上げなどのキャンプをしていたこともあった。現実世界よりもゲームのバーチャルな世界にいることの方が多く、ほとんどリアルなお金は使わなかったが、満足感がありつつもそろそろ現実世界に戻ってこようと思うようになり、ゲームから離れていった部分もある。

MMORPGは膨大な時間泥棒であるがゆえに、当時無数にあった同ジャンルの作品もすっかり下火になった感がある。しかし、オンラインゲーム黎明期において、これらの作品が持っていた影響力は今なおどこかで継承され続けているかもしれない。




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