『スター・ウォーズ』の映画魔法を生んだTippett Studio、バークレー拠点を退去 スタジオ自体は存続

『スター・ウォーズ』の映画魔法を生んだTippett Studio、バークレー拠点を退去 スタジオ自体は存続




『スター・ウォーズ』のホロチェスや『帝国の逆襲』のAT-AT――。映画史に残る特殊効果を支えてきた制作物までが工房から運び出される、少し寂しい光景が米カリフォルニア州バークレーで見られました。

●Tippett Studio公式LinkedIn声明
https://www.linkedin.com/posts/tippett-studio_we-have-recently-decided-to-evolve-our-physical-activity-7499891248174923776-7quz

特殊効果・VFX制作会社のTippett Studioは、長年使用してきたバークレーの施設から退去することを明らかにしました。8月28日から30日にかけて現地では制作物や機材などの売却イベントが行われ、TheWrapによれば、『スター・ウォーズ』のホロチェス撮影に使われた模型や『帝国の逆襲』のAT-AT模型をはじめ、プロップ、コスチューム、ストップモーション用モデル、カメラ、特殊効果機材などが並んだといいます。

ただし、ここで重要なのは「Tippett Studioがなくなる」という話ではないことです。同社は公式声明で、バークレー施設からは退去するものの、映画、テレビ、エンターテインメント分野でのVFXおよびアニメーション制作を今後も継続すると説明しています。

巨大な工房を手放しても、制作活動は続く

Tippett Studioは公式LinkedInで、今回の決定を「物理的な拠点と制作アプローチを進化させる」ものと説明しています。

カナダでの事業も継続され、トロントスタジオでは現在、大型長編映画を制作中とのこと。また、同社の代名詞ともいえるストップモーションについても、今後のクリエイティブ能力の重要な一部として残していくと明言しています。

変わるのは、そうした制作を行うための巨大な施設を常設し続ける必要がなくなったという点です。

専用ステージや造形作業、モーションコントロール撮影といった特殊な設備が必要になった場合は、案件に応じて適切な外部施設を利用していく方針だとしています。

言い換えれば、特殊効果の技術そのものを手放すのではなく、「何でも自社の巨大工房の中に抱えておく」という従来型の制作体制を見直すわけです。

ストップモーションからCG時代までを生きたスタジオ

Tippett Studioは1984年に設立されたVFX・アニメーションスタジオです。創設者のフィル・ティペットは、映画の特殊効果史を語るうえで欠かせない人物のひとりでしょう。公式サイトでも、『スター・ウォーズ』旧三部作や『ロボコップ』などに代表されるストップモーションの歴史を同社のルーツとして紹介しています。

『帝国の逆襲』では、ホスの戦いに登場するAT-ATを模型によるストップモーションで表現。歩行の動きを作る際には、実際のゾウの足運びまで研究したことがStarWars.comでも紹介されています。

その後は『ロボコップ』のED-209などのストップモーションを手掛ける一方、映画の特殊効果がCGへ大きく転換していく時代にも対応していきました。

象徴的なのが『ジュラシック・パーク』です。Tippett Studio自身も同作を「伝統的なストップモーションからCGベースのVFXへのパラダイムシフト」と位置づけており、物理的なアーマチュアを操作してCGの恐竜に動きを付ける「Digital Input Device」の開発にも携わりました。

さらに『スターシップ・トゥルーパーズ』では大量のデジタルクリーチャーを制作し、同社にとって本格的なCGスタジオへ移行する節目になったとされています。

そう考えると、今回のバークレー拠点退去も、単なる「名門スタジオの終わり」ではなく、映画制作の方法がまたひとつ変化した出来事として見るほうが実態に近そうです。

映画史を保存してきた“場所”がなくなる意味

とはいえ、長年使われてきたバークレーの工房がなくなる意味は小さくありません。

そこには、映画のために作られた模型や造形物だけではなく、それらを撮影するための機材や、職人たちが試行錯誤を重ねてきた物理的な制作環境そのものがありました。

TheWrapは、今回の売却イベントについて、2024年にTippett Studioが米連邦破産法11条の適用を申請した経緯にも触れています。一方で、今回Tippett Studioが出した公式声明は、会社や制作活動の終了ではなく、あくまで拠点と制作方法の再編であることを強調しています。

今後は、必要なときだけ専用のステージや工房を確保し、案件ごとに最適な制作環境を組み上げていく。これは固定設備を維持するコストを減らせる一方で、かつての特殊効果会社に見られた「ひとつの場所に技術と道具と歴史が蓄積していく工房文化」が変わっていくことも意味します。

AT-ATのようなミニチュアが実際に動き、クリーチャーが一コマずつ命を与えられてきた場所は姿を消します。しかし、その技法まで消えるわけではありません。

Tippett Studioが公式声明でストップモーションを今後も残すとわざわざ明記したことは、その点で象徴的です。巨大な工房は手放しても、必要なときには物理模型を作り、ステージを用意し、モーションコントロール撮影を行う。映画の“手触り”を生み出してきた技術は、場所を変えながら次の作品へ引き継がれていくことになりそうです。

via.TheWrap




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA