1986年公開の映画『エイリアン2』(Aliens)で、惑星LV-426にそびえ立っていた巨大な大気処理施設。スクリーンでは圧倒的なスケールを持つSF建造物として描かれていましたが、その撮影に使われたモデルのひとつは、意外なほどコンパクトなものでした。
映画やテレビ作品の小道具などを扱うPropstoreが開催した「Entertainment Memorabilia Live Auction: Los Angeles Summer 2026」に、その実物がLot #8として登場。最大部分のサイズは約91.5×19×40.75cmしかありません。
しかも驚くべきことに、巨大な工場を精密な立体模型として丸ごと作ったものではありません。建物の主要部分は、**写真をベースに作られた“平たいファサード”**だったのです。

巨大なSF施設の正体は「平たい建物」だった
出品されたのは「Light-Up LV-426 Atmosphere Processing Plant Forced-Perspective Building Facade Model Miniature」と名付けられた撮影用モデルです。
Propstoreによると、『エイリアン2』ではこのタイプの「Flat(平面)」な建物モデルが強制遠近法を使った撮影のために製作されていました。

基本的な仕組みは、建物を写した写真ベースの素材をアクリルなどの支持体に取り付け、それを背後から照らすというもの。カメラから見える側には巨大な建造物の姿がありますが、横や後ろから見れば、立体的なビルというよりも巨大な書き割りに近い構造です。
今回出品されたモデルも2枚のファサードから構成されており、小さい手前側は複合木材のボード、大きい側はアセテートとフォーム製の支持板で作られています。
完成した映画だけを見ていると、まさかこんな「平たい建物」がLV-426の巨大施設を作るために使われていたとは想像しにくいでしょう。
なぜ巨大な立体模型を作らなかったのか?
もちろん『エイリアン2』の制作陣が模型を作る手間を惜しんだわけではありません。
このモデルには、ちゃんと小さく作る必要がありました。

Propstoreによると、これは劇中でドロップシップがアケロン(LV-426)の大気圏へ進入する場面の撮影用として製作されたもの。より大きなスケールのモデルでは、上空から見下ろすようなショットを撮影するためには物理的に巨大になりすぎてしまうことから、別途、小型のモデルが用意されたと説明されています。
そこで活用されたのが「forced perspective(強制遠近法)」です。
カメラからの距離や配置、大きさの異なる素材などを組み合わせ、人間の遠近感を利用して実際以上の奥行きやスケールがあるように見せる撮影方法です。
つまり、「数百mありそうな巨大SF工場だから、同じように巨大で精密な模型を作る」のではなく、カメラからどう見えるかに必要な部分だけを作るという、映画ならではの発想だったわけです。
裏側には配線。背後から光らせて巨大施設らしさを演出
さらに面白いのが、このモデルの裏側です。
2枚のファサードにはそれぞれ配線が取り付けられており、大型側には多数のLEDが組み込まれています。電源を接続すると背後から光が当たり、建物に設けられた照明などを表現できる仕組みになっています。
平面的な写真であっても、暗い背景の中で窓や設備の一部が発光し、さらに遠近感を考慮した構図で撮影すれば、そこに巨大な施設が存在しているように見える――というわけです。

現在の電装部分については注意も必要です。
撮影終了後、電子部品を再び動作させるための修復作業が行われており、現在は外部電源が追加されています。ただし、この電源は長時間接続すると過熱するため、Propstoreは長時間使用しないよう注意しています。
そのほか、実際の撮影や経年による変色、ひび割れ、接着剤の浮きなども確認されています。つまり、新品同様に保存された模型というよりも、撮影現場を経て約40年が経過した実制作物というわけです。

制作したのはRobert Skotak率いる4-Ward Productions
この小型モデルを製作したのは、Robert Skotak率いる4-Ward Productionsです。
Skotakは『エイリアン2』の視覚効果制作に携わった人物のひとりで、このモデルも同社によって専用に組み立てられ、手作業で塗装されたものとされています。
『エイリアン2』はCGが現在ほど一般的ではなかった時代に、ミニチュアやマット、プロジェクションなどさまざまな技法を組み合わせて広大なSF世界を作り上げた作品です。本作はアカデミー賞でも視覚効果賞を受賞しています。
完成映像からは見えない「どうやって撮ったのか」が、40年後にこうした撮影用モデルから読み取れるのも面白いところでしょう。
オークションは終了。最終落札額は公開されず
今回のLot #8が出品されたPropstoreのオークションは、2026年8月26日9時30分(PDT、日本時間8月27日1時30分)から開催されました。
事前の落札予想価格は3,000~6,000ドル(約47万8,300~95万6,700円)。ただし、これはあくまでPropstoreが設定したEstimate(予想価格)で、実際の落札価格ではありません。
現在、Lot #8のステータスは「Sold」となっていますが、「Winning Bid」は「N/A」と表示されており、最終的な落札額は公開されていません。
出品物にはPropstoreのCertificate of Authenticity(証明書)も付属しています。なお、海外発送の場合、送料のほか関税や税金などは購入者負担となり、発送時には商品の全価値を申告するとPropstoreは説明しています。
映画の中では巨大な未来の工業施設。しかし、その裏側にあったのは、約91cmの写真ベースの“平たい建物”。
最新CGとはまったく異なる方向からスクリーンの巨大世界を作り上げた、アナログ特撮ならではの「映画の魔法」がよくわかる撮影用モデルといえそうです。




















コメントを残す